新リース会計基準はいつから?変更点を公認会計士が図解でわかりやすく解説

「新リース会計基準」の導入が迫る中、「一体いつから適用されるのか?」「具体的に何が変わり、自社にどんな影響があるのか?」といった疑問や不安を抱える経理担当者や経営者の方も多いのではないでしょうか。本記事では、公認会計士が新リース会計基準の全体像を、図解を交えながら基礎からわかりやすく解説します。この記事を読めば、新リース会計基準の適用時期から主要な変更点、財務諸表や業務プロセスへの影響、そして今から着手すべき具体的な準備・対応策まで、実務に必要な知識を網羅的に理解できます。結論として、新基準が導入される最大の理由は国際的な会計基準(IFRS)との差異を解消するためであり、最も重要な変更点は、これまでオフバランス処理が可能だったオペレーティング・リースを含め、原則としてすべてのリースを資産(使用権資産)と負債(リース負債)として貸借対照表に計上(オンバランス化)することです。短期リースや少額リースといった簡便的な取扱いについても詳しく解説しますので、ぜひ最後までご覧になり、万全の準備を進めてください。

目次

新リース会計基準とは 概要と導入の背景

2026年4月1日から適用が開始される見込みの「新リース会計基準」。これまで「オペレーティング・リース」として費用処理していた契約も、原則として資産計上が求められるようになり、多くの企業の財務諸表や業務に大きな影響を与えることが予想されます。この章では、新リース会計基準の基本的な概要と、なぜ今、この基準が導入されるのか、その背景をわかりやすく解説します。

そもそもリース会計とは

リース会計とは、企業がコピー機や社用車、不動産などをリース契約で利用する際の会計処理の方法を定めたルールのことです。リース取引は、実質的なモノの購入と変わらないものから、短期的なレンタルに近いものまで様々です。

これまでの会計基準では、リース取引を大きく2つに分類していました。

  • ファイナンス・リース取引: 契約期間の途中で解約できず(ノンキャンセラブル)、リース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受でき、コストも負担する(フルペイアウト)取引のこと。実質的には資産を購入したのと同じとみなされ、資産として貸借対照表に計上(オンバランス)します。
  • オペレーティング・リース取引: ファイナンス・リース取引以外のリース取引。一般的な「レンタル」に近いイメージで、支払ったリース料を費用として処理し、貸借対照表には計上しません(オフバランス)。

この「オペレーティング・リース」がオフバランス処理される点が、今回の会計基準変更における最大のポイントとなります。

新リース会計基準が導入される理由 IFRSとのコンバージェンス

新リース会計基準が導入される最大の理由は、IFRS(国際財務報告基準)第16号「リース」とのコンバージェンス(収斂)です。グローバルに事業を展開する企業が増える中、各国の会計基準が異なると、投資家が企業の財務状況を正しく比較・評価することが困難になります。そこで、日本の会計基準を国際的なスタンダードに合わせる動きが進められています。

特に、従来のオペレーティング・リースには大きな課題がありました。航空会社が多くの航空機をオペレーティング・リースで調達しているケースのように、企業によっては多額のリース契約を抱えているにもかかわらず、それが貸借対照表に負債として表示されない「オフバランス」の状態でした。これは、投資家が企業の隠れた債務を把握できず、財政状態を誤って判断してしまうリスクをはらんでいました。新リース会計基準は、こうした問題点を解消し、財務報告の透明性と国際的な比較可能性を高めることを目的としています。

これまでのリース会計との違いを比較

新リース会計基準によって、特に「借り手」の会計処理が大きく変わります。具体的に何がどう変わるのか、現行基準と新基準案を比較してみましょう。

比較項目これまでのリース会計基準新リース会計基準
リースの分類ファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類原則としてすべてのリースを単一のモデルで処理(分類を廃止)
貸借対照表への計上ファイナンス・リースのみ資産・負債を計上(オンバランス)
オペレーティング・リースは計上不要(オフバランス)
原則としてすべてのリースで「使用権資産」と「リース負債」を計上(オンバランス)
損益計算書への計上【ファイナンス】減価償却費と支払利息
【オペレーティング】支払リース料
原則としてすべてのリースで減価償却費と支払利息を計上

このように、最も大きな変更点は、これまでオフバランス処理が可能だったオペレーティング・リースも原則として資産・負債を計上する「オンバランス化」が義務付けられることです。これにより、企業の貸借対照表に計上される資産と負債がともに増加し、自己資本比率などの財務指標に影響を与える可能性があります。

新リース会計基準はいつから適用されるのか

新リース会計基準の適用スケジュール (3月決算企業の例) 2024年4月1日 2025年4月1日 2026年4月1日 ① 早期適用の場合 2025年3月期から適用可能 ここから早期適用OK ② 原則適用(強制適用)の場合 準備期間(システム改修等) 2027年3月期から 原則適用開始 ⚠️ 重要ポイント 年度末の一括処理ではなく、 第1四半期の期首から 適用が必要です。

企業の財務担当者や経営層にとって、新しい会計基準がいつから強制適用されるのかは、準備計画を立てる上で最も重要な情報の一つです。2023年5月に企業会計基準委員会(ASBJ)から公表された「リースに関する会計基準(案)」(以下、公開草案)では、新リース会計基準の適用時期について具体的なスケジュールが示されています。ここでは、原則的な適用開始時期と、早期適用が認められるケースについて詳しく解説します。

原則的な適用開始時期

公開草案によると、新リース会計基準の原則的な適用開始時期は、2026年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首からと提案されています。つまり、多くの日本企業が採用している3月決算の会社であれば、2027年3月期の期首である2026年4月1日から適用が開始されることになります。

具体的な適用開始日を事業年度ごとに整理すると、以下のようになります。

決算月 原則的な適用が開始される事業年度
3月決算の会社 2027年3月期(2026年4月1日~2027年3月31日)
12月決算の会社 2027年12月期(2027年1月1日~2027年12月31日)
6月決算の会社 2027年6月期(2026年7月1日~2027年6月30日)

ここで注意すべき重要な点は、適用初年度の第1四半期会計期間から新基準を適用する必要があるという点です。年度末の決算時にまとめて会計処理を行うのではなく、期首の時点から新基準に則った会計処理を開始し、四半期報告書にも反映させなければなりません。このため、適用開始年度を迎える前に、システム改修や業務プロセスの見直しを完了させておく必要があります。

早期適用は認められるか

今回の新リース会計基準では、原則適用の開始時期より前に、任意で新基準を適用する「早期適用」が認められる見込みです。公開草案では、2024年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から早期適用が可能とされています。

例えば、3月決算の会社であれば、2025年3月期(2024年4月1日開始事業年度)から早期適用を選択できます。これにより、企業は自社の準備状況や経営戦略に応じて、柔軟に適用タイミングを判断することが可能になります。

決算月 早期適用が可能な最も早い事業年度
3月決算の会社 2025年3月期(2024年4月1日~2025年3月31日)
12月決算の会社 2025年12月期(2025年1月1日~2025年12月31日)

早期適用を検討する企業としては、親会社がすでにIFRS(国際財務報告基準)を適用しており、グループ全体で会計方針を統一したいグローバル企業の子会社などが想定されます。また、海外の投資家に対して財務諸表の比較可能性を高めたい企業にとっても、早期適用は有効な選択肢となり得ます。ただし、早期適用を行う場合は、その分だけ準備期間が短くなるため、システム対応や社内体制の構築を前倒しで進める必要がある点には留意が必要です。

【図解】新リース会計基準の主要な変更点5つ

新リース会計基準の主要な変更点5つ 1. 原則オンバランス化 (借手) 【従来】 オペレーティング・リース 賃貸借処理 (オフバランス) 【新基準】 原則すべてのリース 貸借対照表 (B/S) 使用権資産 (減価償却) リース負債 (利息・返済) 2. 貸手の処理は変更なし 貸手側は従来通り区分経理。 影響は主に「借手」の企業。 = 3. 簡便的な取扱い (例外) 短期 (12ヶ月以内) 少額資産 (PC等) これらはオフバランス処理が可能 4. リースとサービスの分離 リース要素 サービス要素 オンバランス 費用処理 5. 注記情報の拡充 定性的情報 (リスク管理方針など) 定量的情報 (使用権資産の増減など)

2026年度以降に適用が開始される見込みの新リース会計基準は、企業の財務諸表や業務に大きな影響を与えます。特にこれまでオフバランス処理が可能だったリース契約の取扱いが大きく変わるため、経理担当者や経営層は変更点を正確に理解しておく必要があります。ここでは、新リース会計基準の主要な変更点を5つのポイントに絞って、図解を交えながらわかりやすく解説します。

変更点1 すべてのリースを原則オンバランス化

新リース会計基準における最大の変更点は、借手側の会計処理において、これまで認められていたオペレーティング・リースとファイナンス・リースの区分が原則として廃止されることです。これにより、短期・少額などの例外を除き、すべてのリース契約を資産および負債として貸借対照表(B/S)に計上する「オンバランス化」が求められます。

これまでは、所有権が移転しないような一般的な賃貸借契約に近いオペレーティング・リースは、支払リース料を費用計上するだけでよく、B/Sには記載されませんでした。しかし新基準では、リース資産を使用する権利を「使用権資産」、将来のリース料支払義務を「リース負債」として認識する必要があります。

使用権資産とリース負債とは

オンバランス化に伴い、新たにB/Sに計上されるのが「使用権資産」と「リース負債」です。これらの概念は以下の通りです。

  • 使用権資産:リース期間にわたり、対象となる資産(例:コピー機、自動車、不動産など)を使用する権利のこと。資産として計上され、減価償却の対象となります。
  • リース負債:リース期間中の未払リース料総額を、利子率などを考慮して現在価値に割り引いた金額のこと。負債として計上され、リース料の支払いに応じて減少していきます。

この変更により、これまでB/Sに現れていなかったリース契約が可視化され、企業の財政状態をより正確に把握できるようになります。

変更点2 貸手の会計処理は基本的に変更なし

借手側の会計処理が大きく変わる一方で、貸手(リース会社など)の会計処理については、現行の会計基準から大きな変更はありません。貸手は引き続き、リース契約をファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類し、それぞれに応じた会計処理を行います。今回の基準変更は、主に借手側の企業に影響を与えるものであると理解しておきましょう。

変更点3 簡便的な取扱いが認められるケース

すべてのリース契約をオンバランス化することは、企業の経理業務に大きな負担を強いる可能性があります。そのため、実務上の負担を軽減する目的で、特定のリース契約については簡便的な取扱い(オンバランス化しない処理)が認められています。具体的には「短期リース」と「少額リース」が該当します。

短期リースの定義

短期リースとは、リース期間がリース開始日から12ヶ月以内であるリースを指します。例えば、イベント用に3ヶ月だけ借りるオフィス機器や、繁忙期に半年間だけレンタルするPCなどが該当します。これらのリースは、従来通り支払リース料を費用として計上することが可能です。

少額リースの定義

少額リースとは、リース対象となる資産そのものの価値が低いリースを指します。国際的な基準(IFRS第16号)では新品時の価額が5,000米ドル以下という目安が示されていますが、日本の新基準では具体的な金額は明示されず、各企業が重要性の観点から判断することになります。一般的には、PC、タブレット、事務用デスク、電話機などが想定されます。この少額リースの判定は、リース契約単位ではなく、原資産単位で行う点に注意が必要です。

変更点4 リースとサービス契約の分離

一つの契約の中に、資産を借りる「リース要素」と、保守・メンテナンスなどの「サービス要素(非リース要素)」が混在している場合があります。新基準では、原則として契約に含まれるリース要素と非リース要素を分離し、リース要素部分のみを使用権資産とリース負債として計上する必要があります。

例えば、車両リース契約にメンテナンスサービスが含まれている場合、車両本体のリース料とメンテナンス料を区分し、前者のみをオンバランス処理の対象とします。後者のメンテナンス料は、従来通り費用として処理します。これにより、契約内容をより詳細に分析し、会計処理に反映させることが求められます。

変更点5 注記情報の拡充

財務諸表の利用者(投資家や金融機関など)に対して、企業のリース契約に関するより詳細な情報を提供するため、開示(注記)すべき情報が拡充されます。これにより、企業のリース利用の実態や将来のキャッシュ・フローへの影響がより明確になります。

具体的に拡充される注記情報の例を以下に示します。

項目主な注記内容
定性的情報リースの内容、重要な判断や見積り、リスク管理方針など
定量的情報使用権資産の増減内訳、リース関連の損益(減価償却費や支払利息)、リース負債の帳簿価額、将来のリース料支払額の期間別内訳など

これらの詳細な情報開示により、企業の財務分析の精度が向上することが期待されています。

新リース会計基準が企業に与える影響

新リース会計基準の導入は、単なる会計処理の変更に留まらず、企業の財務状況、業務プロセス、さらには経営の意思決定にまで広範な影響を及ぼします。特に、これまで多くのリース契約をオフバランス処理してきた企業にとっては、そのインパクトは非常に大きなものとなります。ここでは、新基準が企業に与える具体的な影響を3つの側面に分けて詳しく解説します。

財務諸表へのインパクト

新リース会計基準がもたらす最も直接的かつ大きな影響は、財務諸表、特に貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)へのインパクトです。これまで費用処理のみで済んでいたオペレーティング・リースが資産・負債として計上される(オンバランス化)ため、各種財務指標が大きく変動する可能性があります。

主な財務指標への影響を、従来の会計基準と比較してみましょう。

項目従来の会計基準(オペレーティング・リース)新リース会計基準
貸借対照表(B/S)オフバランス(資産・負債に計上されない)オンバランス(「使用権資産」と「リース負債」を計上)
総資産変動なし増加する
負債変動なし増加する
自己資本比率変動なし低下する傾向(総資産が増加するため)
負債比率(D/Eレシオ)変動なし上昇する傾向(負債が増加するため)
損益計算書(P/L)の費用支払リース料(主に販売費及び一般管理費)減価償却費(主に販売費及び一般管理費)+ 支払利息(営業外費用)
EBITDA変動なし増加する傾向(支払リース料が減価償却費と支払利息に置き換わるため)

このように、総資産と負債が同時に膨らむことで、自己資本比率の低下や負債比率の上昇を招きます。これは、企業の財務健全性を示す指標が悪化したように見えるため、金融機関からの借入時に定められる財務制限条項(コベナンツ)に抵触しないか、事前に十分な確認と対策が必要となります。

業務プロセスやシステムへの影響

会計処理の変更は、経理部門だけでなく、社内の様々な業務プロセスや管理システムにも影響を与えます。適切な対応が遅れると、決算業務の遅延や内部統制上の問題に発展する可能性もあります。

まず、社内に存在するすべてのリース契約を網羅的に把握し、一元管理する体制の構築が急務となります。これまでは各部署が個別に契約・管理し、経費として処理していたコピー機のリースや営業用車両のカーリースなども、原則として資産計上の対象となるため、本社経理部門が全社の契約情報を正確に収集・管理しなければなりません。

また、収集した契約情報から使用権資産とリース負債の計算、減価償却費や支払利息の月次計上、契約変更時の再測定など、複雑な計算と仕訳処理が求められます。これらの業務をExcelなどで手作業で行うには限界があり、多くの企業でリース資産管理システムの導入や既存システムの改修が必要となるでしょう。

株式会社プロシップのような設備投資計画への影響

新リース会計基準は、企業の設備投資に関する意思決定にも影響を与えます。固定資産・リース資産管理システムを提供する株式会社プロシップの顧客層のように、多くの設備をリースで調達している企業は特に注意が必要です。

従来は、財務諸表をスリムに見せる「オフバランス効果」を狙って、購入ではなくリースを選択するケースが多くありました。しかし、新基準ではリースも購入と同様に資産・負債として計上されるため、このメリットは失われます。今後は、オフバランスという会計上のメリットではなく、初期投資の抑制、陳腐化リスクの回避、メンテナンスの容易さといった、リース本来の経済合理性に基づいて購入かリースかを判断することがより一層重要になります。

さらに、総資産が増加することでROA(総資産利益率)が低下する可能性があり、投資効率を重視する経営指標(KPI)を見直す必要も出てくるでしょう。設備投資計画を策定する際は、新基準適用後の財務諸表シミュレーションを行い、経営目標や財務戦略との整合性を図ることが不可欠です。

新リース会計基準の適用に向けた準備と対応策

新リース会計基準 適用への3ステップ STEP 1 リース契約の 網羅的な把握 ■ 全契約の洗い出し (本社・支社・工場等) ■ リース契約台帳の作成 ■ 契約情報の集約 (期間・金額・条件等) STEP 2 会計方針の決定 (ルールの策定) ■ 簡便的取扱いの基準 (少額・短期リースの判断) ■ 割引率の算定方法 ■ リース期間の判断基準 (延長・解約OPの確実性) STEP 3 業務フローと システムの整備 ■ システムの導入・改修 (Excel管理からの脱却) ■ 業務フローの見直し ■ 内部統制の構築 (承認プロセス・実在性)

新リース会計基準への対応は、単に経理部門の会計処理が変更されるだけではありません。リース契約の管理方法から業務フロー、情報システムに至るまで、企業全体で取り組むべき重要なプロジェクトです。適用開始から逆算し、計画的かつ段階的に準備を進めることが、スムーズな移行の鍵となります。ここでは、具体的な準備と対応策を3つのステップに分けて解説します。

ステップ1 リース契約の網羅的な把握

新基準適用の第一歩は、自社が締結しているすべてのリース契約を正確に洗い出すことです。これまで費用処理(オフバランス)していたオペレーティング・リースも原則として資産・負債の計上対象となるため、従来は経理部門が把握していなかった契約も対象に含まれる可能性があります。各部署に散在する契約書を収集し、一元的に管理する体制を構築する必要があります。

具体的には、本社だけでなく支社や営業所、工場などが個別に契約しているコピー機や社用車、不動産の賃貸借契約なども含め、全社的に調査を行います。その上で、各契約について以下の情報を整理し、リース契約台帳としてリスト化することが重要です。この作業は、後の会計処理やシステム入力の基礎となるため、正確性が求められます。

リース契約で把握すべき情報リストの例
分類 項目 内容
基本情報 契約相手方 リース会社の名称など
リース物件 資産の種類、名称、数量など
契約期間 契約開始日と終了日
契約条件 リース料 月額・年額の支払額、支払スケジュール
オプション 契約延長オプション、解約オプションの有無とその条件
非リース要素 保守・メンテナンス費用の有無とその金額

ステップ2 会計方針の決定

リース契約の全体像が把握できたら、次に新基準の適用における自社の会計方針を決定します。新リース会計基準では、企業の実態に応じて選択できる項目や、判断が求められる領域が存在します。自社の事業内容や資産管理の状況を踏まえ、一貫性のあるルールを事前に定めておくことで、担当者による判断のブレを防ぎ、適切な会計処理を継続的に行うことができます。

特に重要な決定事項は以下の通りです。

  • 簡便的な取扱いの適用基準
    短期リース(リース期間が12ヶ月以内)や少額リースについて、資産計上せず費用処理を継続する「簡便的な取扱い」を適用するか、また適用する場合の金額基準(例:50万円以下など)を決定します。
  • 割引率の算定方法
    リース負債を現在価値に割り引く際に使用する「割引率」の算定方法を確立します。貸手の計算利子率が不明な場合に用いる「追加借入利子率」を、どのような根拠で算定するかを具体的に定めておく必要があります。
  • リース期間の判断基準
    借手がリース期間の延長オプションや解約オプションを有している場合、そのオプションを「行使することが合理的に確実かどうか」を判断する基準を設けます。この判断によって資産・負債の計上額が変動するため、客観的な基準が不可欠です。

ステップ3 業務フローとシステムの整備

会計方針が固まったら、それを実行するための業務フローと情報システムを整備します。新基準では、リース契約開始時の資産・負債計上に加え、期中の減価償却費や支払利息の計算、契約条件変更時の再測定など、管理が複雑化します。手作業での管理は限界があり、Excelなどでの管理は属人化やヒューマンエラーのリスクを高めます

そのため、多くのリース契約を抱える企業にとっては、リース管理に特化したシステムの導入や、既存の会計・固定資産管理システムの改修が現実的な選択肢となります。例えば、株式会社プロシップが提供するような固定資産管理システムは、新リース会計基準に対応した機能を有しており、複雑な計算や仕訳作成を自動化し、業務効率を大幅に向上させます。

システム導入と並行して、以下の業務フローの見直しも行いましょう。

  • 契約管理フロー: 新規にリース契約を締結する際に、必要な情報を経理部門へ連携するルールを明確化します。
  • 会計処理フロー: システムから出力された仕訳データの会計システムへの連携方法や、承認プロセスを整備します。
  • 内部統制: リース資産の実在性確認や、計上額の妥当性検証など、新たな会計処理に対応した内部統制の仕組みを構築します。

これらの準備を計画的に進めることで、新リース会計基準への円滑な移行を実現し、決算業務の混乱を未然に防ぐことができます。

まとめ

本記事では、新リース会計基準の概要から適用時期、主要な変更点、企業への影響までを網羅的に解説しました。新リース会計基準が導入される最大の理由は、国際的な会計基準であるIFRSとのコンバージェンスを図り、企業の財務状況の透明性と比較可能性を高めることにあります。

最も重要な変更点は、これまでオフバランス処理が可能だったオペレーティング・リースを含め、短期・少額リースなどの例外を除き、原則としてすべてのリース契約を資産(使用権資産)と負債(リース負債)として貸借対照表に計上(オンバランス化)することです。

この変更により、多くの企業で総資産と負債が増加し、自己資本比率などの財務指標に影響が及ぶ可能性があります。また、対象となるリース契約の網羅的な把握や、使用権資産・リース負債の計算など、経理業務のプロセスが複雑化するため、会計システムの改修や業務フローの見直しが不可欠となります。

新リース会計基準への対応は、単なる会計処理の変更に留まりません。適用開始に向けて、自社のリース契約の実態把握、会計方針の早期決定、そして関連部署を巻き込んだシステム・業務プロセスの整備を計画的に進めることが重要です。

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